野鳥を撮影する人々に愛される鳥たちがいる一方で、彼らに見向きもされない鳥たちもいる。例外なく撮影の必要条件が低い鳥たちだ。たとえば、カモ類もそうだ。体が大きいのでせいぜい10~15倍のズームがあればよく、動きも少ないので撮影は楽。三脚など不要だ。
コガモというカモがいる。子ガモではなくカモの一種である。成鳥でもカモ的には小型(といってもハトよりやや大きめ)なのでコガモと命名されている。非常にまぎらわしいネーミングだ。商標登録だったら一発で拒絶査定をくらうだろう。「親ガモでもコガモ」っておかしいだろというわけだ。このコガモ、以前はあまり見なかったが、最近増えてきた。あちこちの水域で以前カルガモがいた場所を次々に攻略しつつあるようだ。
カルガモ以外のカモ類は暖かくなってくるといつの間にかいなくなるが、コガモは春の終わりの暑さを感じ始める直前ころまで居残る。また、カルガモは見た目ではオスとメスの区別がつかないが、コガモは他のカモと同様にオスが派手、メスが地味なので性別はすぐにわかる。ただし若鳥はオスもメスとほぼ同じ地味な外観をしている。
上がメス、下がオス |
コガモのオスは求愛行動をするらしい。あるサイトで図解されており、それを要約するとこうなる(コガモで検索すると何番目かに出てくる):
オスがメスに近づき、頭を下げ、ついで頭を左右に振り
ながら水をメスに掛ける(水かけ)。
そして頭を急に持ち上げて体を反らせ、尾筒のクリーム
色の羽をメスに見せつける(反り縮み)。
私が撮影した画像にもこのサイトの図解に似たオスのポーズがあった。
水かけ |
反り縮み |
しまいにはこんなアクロバティックなポーズも披露 |
これらの3画像は元の3:2のアスペクトの画像を正方形にトリミングしたものだが、元画像を見てもそばにメスの姿は写っていない。だとすれば、これはエア求愛だった可能性がある。動物の行動は本能的で、ぶっつけ本番でもいけると思われるのだが、このオスは求愛のシミュレーションと技術向上にはげんでいたことになる。この練習としてのエア求愛も本能的行動なのかもしれない。下心が強すぎる個体は自由意思で練習にはげむということではないだろう(笑)。
悪そうな目つきのオス |
わかりにくいが3羽のコガモ いちばん下のみがメス |