町のあちこちで見える目立つ煙突がある。高さは130mらしい。
すぐそばにもっと高い200mの煙突があるのだが、こちらの煙突は形態的に魅力が薄いばかりでなく、まったく煙を出さないという煙突として致命的な弱点(?)をもっている。煙突である以上なんらかの排出は行っているはずなのに、煙が見えないのだ。煙というアクセサリーのない煙突は味気ない。見向きもされない無用のモニュメントのようなものだ。
一方、低いほうの煙突はきまって冬場にさかんに白い煙を噴き上げる。雲の色と一緒の白い煙というのがミソだ。煤煙を含んだ黒っぽい煙なら見る者に不安を覚えさせるはずだが、それがない。白い煙の組成や有害性については不明だとしても。
両方とも火力発電所の煙突なのだが、燃料が違うらしい。高いほうは石炭、低いほうはLNGということだ。石炭火力の煙突のほうが煙を出さないというのは不思議だ。技術力のおかげらしい。
低いほうの煙突にしても、噴煙を出すのは冬場だけというのが気になる。電力需要は真夏も多いわけで、夏場も稼働するのが当然のはずなのだが、煙は出さない。この煙突から排出される白い噴煙はかなり低温の蒸気みたいなもので、吐く息が冬にだけ白く見えるように、冬場以外は私たちの目に見えなくなるだけなのかもしれない。
昨年の秋のある日、この煙突のてっぺん部分がいつもと違って見えた。好奇心から一般人が接近できる最短距離まで近づいてみた。すると、てっぺん部分に作業用のパイプ足場が組まれていた。補修工事がはじまるらしかった。その後すぐに、パイプ足場の部分が緑色のシートで覆われた。パイプ足場が組まれた煙突の景観がとても気に入っていたので、緑色のシートで隠されたときはひどくがっかりした。
パイプ足場が組まれた圧倒的な光景 |
シートが巻かれた状態 |
右側の高い煙突が石炭火力の200m煙突 |
緑色のシートで覆われた状態はしばらく続き、日常的風景になっていったが、気がつくといつの間にかシートも足場も消えており、煙突の外周が白く塗装されていた。補修工事は完了したようだ。
補修後 |
この煙突、今日もまだ白い煙を噴き上げていた。