2015年3月16日月曜日

ベンチ


この夕刻の光を受けたベンチをはじめて見て存在感を覚えたときから、なぜかベンチというものを少し意識するようになった。とはいってもベンチそのものについては語りようがない。知りたいこともなにひとつない。利用しないわけではないが、意識に上ることはない。ベンチとはそんなものだ。

「座りたいベンチ ベスト10」のようなテレビの企画など見たことがない。座りたいといっても、素材やデザインがいいからなのか、座り心地がいいからなのか、座ったときの眺望が素晴らしいからなのかわからない。

豪華な屋内施設のベンチならともかく、屋外の公共的備品としてのベンチの素材やデザインは質素でありきたりだ。また、座り心地もいいわけがない。どうかしているのでなければあれほどの長時間カップルはベンチに座っていられるはずもない。さらに、たとえ眺めがよくても景勝地のベンチというだけで価値があるはずもない。価値があるのは景観だけ、ベンチの価値はそのへんの公園のベンチとまったく同じだ。

このありきたりの公共的備品はそれでもあちこちでなかなかに魅力的な相貌を見せる。これからもまだまだ魅力的な顔を発見できそうな気がする。