お稲荷さんのキツネはともかく、野生動物としてのキツネは都市部には無縁の存在だろうが、タヌキのほうはそうではないようだ。10年前の本だが、驚くことに東京都の23区内には1000匹以上のタヌキが生息していると推定している。以後10年間に感染症が猛威をふるったり、都市環境が大きく変わった形跡はないので、現在でもタヌキの生息数はさほど変わってないのではないか。
首都東京以外ではタヌキはもっと生息しているはず。目撃例のネックはタヌキが「ほぼ完全な夜行性」であることだろう。そのため、目撃の機会は極度に制限される。
クセモノは「ほぼ」という副詞(?)だ。「ほぼ完全な夜行性」ということは「例外的に昼間も行動することがある」ということだ。本当か? 断言するが本当だ。なぜなら、私自身がその目撃者であり、証拠写真も握っているからだ。
山歩きをした午後、住宅地まで降りてきたとき、小雨で人影のない舗装道路の前方をひどく猫背の犬のようなものが歩いているのに気づいた。まだタヌキとは判定できない。ただ「えっ!?」という感覚で反射的にポケットからコンデジを取り出してシャッターを切った。
猫背の未確認動物 |
画像ではこちらを威嚇しているように見えるが、実際は全然やさしい感じで、威嚇されている感覚はまったくなかった。ふと前足を見ると左足先を傷めていて血が滲んだ状態。それ以上カメラを向けるのは悪い気がしてその場を去った。昨年の4月下旬の午後4時半のことだ。
帰宅後にチェックしたら推測どおりタヌキだった。歩いているときは足を引きずる仕草はなかったが、足の傷は単なる外傷ではなく、腫瘍かその他の重大な疾患の結果で、そのため体がかなり衰弱していた可能性もある。タヌキとしての例外的な昼間の行動はそのためだったのかもしれない。
これが私の生まれて最初でおそらくは最後のタヌキとの遭遇だ。このタヌキのその後の消息は不明だが、傷が癒えて今も山で元気に暮らしていると信じたい。
上の画像はとある自然公園内にある立ち入り自由の古民家に置かれた剥製のタヌキ。現物は目にガラス玉を入れたありありの剥製なのだが、画像にしてみると生きているようにも見えるのが不思議。
ふっくらおひなさま |