都市の魅力のひとつは繁華街とか歓楽街の存在だろう。繁華街にもいろいろなパターンがあるだろうが、基本的にはメインの表通りとサブの裏通りからなると考えてよいだろう。表通りの角を曲がる。それが裏通りだ。で、ちょっと歩くと別の通りにぶつかる。その通りも裏通りだという具合に、繁華街ではそうした通りがたまねぎの皮をむくように次々と現れていく。裏通りの層の厚さ、それが都市の特徴だ。簡単にいえば、都市は商業地区の面積が広いという当たり前のことなのだが。
で、ときどき街に出る。特に用事があるわけではない。かつては街に出なければできないことがいろいろあったが、今はない。街に出なくても地元周辺だけでやっていける。だから街に出るといっても無為にぶらぶら歩くだけ。それで結構、気分転換になるのだ。今は街に出る目的はそれしかない。観光客が集まるようなブロックもあるが、場違いな思いをしたり、気づかれをするだけで、気分転換にもならないので、そうした場所に足を踏み入れることはまずない。
向かうのは昔ながらの繁華街だ。ここでも本通りというか表通りを歩くことはあまりない。すぐに裏通りのほうに、陽の当たらないほうに折れてしまう。犬嫌いなのに野良犬的なサガをもっているらしい。平日の昼間のせいもあるが、裏通りは以前より活気も人通りも少なくなっている。以前は場末の裏通りにはやばさとか、いかがわしさとかいった、多少の緊張感を強いるような雰囲気があったものだが、今ではそうした界隈も遊興施設や店舗の閉鎖などでいたってノーマルな居住地区のようなムードを呈しつつあり、歩いても味気なくなった。